夫婦といえども、お互いが違う宗教を信仰していることはあります。そして、宗教の違いにより、結婚生活がスムーズにいかなくなることもあります。

自分が受け入れられない宗教を配偶者が信仰している場合、宗教の違いを理由に離婚できないかどうか考えるかもしれません。また、子どもがいる場合には、子どもへの影響も考慮して離婚を考えることもあるでしょう。

信仰の自由は、個人の基本的人権として認められるものです。日本国憲法でも「信教の自由」が保障されています。こうしたことから、たとえ夫婦であっても、相手の信仰の自由を否定することはできないのが原則ではあります。

けれども、夫婦というのはお互いが協力して生活を維持していかなければならない関係ですから、個人の自由というだけではすまないことがあります。宗教の違いによって結婚生活に支障が出るような場合には、離婚が認められることもあります。

宗教の違いを理由に離婚したい場合にも、まずは話し合いによる協議離婚から考えることには変わりありません。話し合いでも離婚に合意できない場合には、次の段階として、家庭裁判所に調停を申し立てます。そして、調停も不成立になれば、最終的に裁判で離婚を争うことになります。

裁判で離婚を認めてもらうには、法定離婚原因が必要です（民法770条1項1号～5号）。宗教の違いそのものが離婚原因になることはありませんが、妻が宗教活動に専念しすぎたあまり夫婦としての協力義務違反が続く等、それが他方の不信、嫌悪感を招き婚姻関係が破綻していると認められる場合には、第5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められます。

⇒婚姻を継続し難い重大な事由について詳しくはこちら

このような場合に離婚を認めなければ、夫の方は自分が信仰しない宗教に合わせることになってしまい、適切な夫婦関係とは言えなくなってしまうからです。

なお、離婚の際に子どもがいれば、子どもの親権者を決めなければなりません。夫婦のどちらが親権者になるべきかを考えるときに、基本的には一方が特定の宗教に入信しているからといった事情は関係ありません。

ただ、宗教活動にのめり込みすぎて育児が疎かになるなどの事情がある場合には、かかる事情が親権を決める上での一つの事情として考慮されるでしょう。

親権についても話し合いで決めるのが原則です。親権の争いで裁判になった場合には、裁判所は年齢をはじめとした子どもの事情や夫婦双方の事情を考慮し、総合的に判断します。

⇒親権者について詳しくはこちら

子どもが小さい年齢のうちは母親が面倒を見ていることが多く、母親と子どもを引き離すのは子どもにとって酷なことがあります。こうしたことから、子どもの年齢が小さいほど、親権は母親側になるケースが多くなっています。

親が子どもを奪い合うような状況は、子どもにとっても決して良くありません。親権については、子どもにとってどうするのがいちばん良いのかという視点からよく考えましょう。