弁護士 田中 優征
離婚の相談を受ける中で、配偶者のモラハラが原因で、離婚したいという話を聞くことがあります。
モラハラという言葉が一般化し、法律上は定義も明確にされていませんので、何をもって「モラハラ」とするかは一様ではありませんが、
例えば、「暴力は振るわず、言葉や態度で嫌がらせをし、いじめること。」(goo辞書)等のように表現されることが多いでしょう。
それでは、モラハラは離婚の原因となるのでしょうか。
まず、前提として、離婚の原因について確認しておきます。
離婚の原因は、民法770条1項各号に規定があります。
内容は以下のとおりです。
各号のいずれかに該当する場合には、離婚訴訟において離婚が認められることになります。
モラハラは、1号から4号に該当する事情にはなりませんので、5号に該当するかどうかが問題になります。
5号は1号から4号を包括する一般的な規定と考えられています。
5号の婚姻関係を継続し難い重大な事由がある場合について、日本の裁判所は破綻主義、すなわち、婚姻関係が破綻している場合には、婚姻関係を継続し難い重大な事由があると判断する立場であると理解されています。
したがって、明確な基準があるわけではありませんので、モラハラが離婚原因、すなわち婚姻関係の破綻を示す事情になるかどうかについては、程度問題であり、事案によることになります。
ここでは、参考として、いわゆるモラハラ的な言動を詳細に認定し、離婚原因があると判断した裁判例を紹介します。
元妻である原告が、元夫の被告に対し、被告のモラルハラスメント行為によって離婚を余儀なくされたと主張して、慰謝料の支払いを求めた事案です(本稿と直接の関連がない請求については省略します)。
裁判所は、被告の婚姻後の原告に対する一連の暴言がいわゆるモラルハラスメント行為に当たり、原告の人格権を侵害するものであることは明らかとしたうえで、被告が原告との交際開始時においては婚姻継続中であったこと、前妻との子がいることを秘匿し、婚姻後も自らの婚姻歴について正しく説明していなかったこととあいまって、婚姻関係を破綻させる要因になった(すなわち、離婚の原因となった)と判示し、慰謝料として200万円の支払いを命じました。
なお、被告による自己の発言を正当化する主張については、自信の言葉が相手を傷つける暴力的なものであるとの自覚を欠いているためであるとして排斥しています。
上記の裁判例では、被告による一連の行為が、メッセージアプリ上等に残されており、詳細に検討することができた結果、被告の行為の程度が社会的に見て相当程度問題のあるものであったことから、一連のモラハラ行為やその他の事情も含めて考慮すると、被告の行為が離婚の原因となったという認定をされたものと考えられます。
このように考えると、モラハラが離婚原因に該当すると主張する際には、以下の2点に留意する必要があるでしょう。
① 訴訟において、モラハラ行為があったことの立証ができるかどうか。
モラハラ行為があったという主張をする場合には、モラハラ行為の証拠を提出し、それによってモラハラ行為があったと認定される可能性があります。
具体的な立証の方法としては、メールやLINE等のやり取り、録音などを提出することになります。
しかし、上記の裁判例のように、モラハラ行為の膨大な記録が、詳細に残っている例ということは多くないでしょうから、立証が困難なことも多いと思われます。
① モラハラ行為によって、婚姻関係が破綻しているとまでいえるかどうか。
最初に述べた通り、モラハラという言葉はかなり多義的な言葉です。
夫婦関係が良好ではなく、離婚を検討するような状況になっている夫婦においては、少なからずモラハラ的な言動が生じているといえるでしょう。
あまりに簡単に離婚が認められてしまうと、婚姻制度そのものが揺らぎかねませんから、その(一連の)モラハラ行為をもって法律上離婚を認めるべき程度に婚姻関係を破綻に陥らせたというには、高いハードルがあると考えられます。
上記のような問題点から、配偶者のモラハラ行為によって離婚を決意した場合であっても、その程度や立証可能性の程度に応じて、別居期間やその他の事情をも含め、総合的にみて離婚原因があるという構成をする必要がある場合がほとんどだと思われます。実際、上記裁判例においても、モラルハラスメント行為以外の事情も判断の理由として挙げています。
しかし、モラハラ行為の主張・立証が無駄になるというわけでもありません。どのような経緯で別居に至ったかということも重要な事情となりますし、離婚原因があるかどうかは総合的にみて判断されるからです。
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