令和3年4月に、法務省から、協議離婚に関する実態についての調査研究業務報告書が公表されました。この調査は、協議離婚を経験した30代と40代の男女1000名（男性500名、女性500名）を対象に令和3年3月8日から同月10日までの間、ウェブモニターアンケートの方法で行われております。

この調査では、住んでいる都道府県、離婚の際の子供の人数・性別・年齢、離婚時の就業状況、年収といった様々な情報が記載されています。

この調査の中で、離婚をする前に弁護士に相談又は依頼（委任）をしたか、という質問項目があり、これが協議離婚に関する弁護士の関わりを見る上で参考になると思われます。

離婚をする前に弁護士に相談又は依頼（委任）をしたかという質問に対して、依頼（委任）をした割合が8．6パーセント、相談だけした割合が21．5パーセント、依頼（委任）も相談もしなかった割合が69．9パーセントとなっています。
そのため、ほぼ7割の方が協議離婚をする際に、弁護士に依頼（委任）はせず、相談もせずに協議離婚をしているという結果になっています。

弁護士に依頼（委任）をしなかった理由について質問する項目もあり、この質問項目では、
・弁護士なしでも解決することができると思ったからという理由が60．4パーセント
・弁護士に依頼する金銭的な余裕がなかったという理由が22．3パーセント
・弁護士に相談するには敷居が高かったからという理由が8．3パーセント
・第三者に相談したくなかったからという理由が4．5パーセント
・弁護士の存在を知らなかったという理由が1．9パーセント
・その他が2．6パーセント
という割合となっていました。
弁護士に依頼（委任）をしなかった理由として経済的な問題があることは良く言われますが、最も多い約6割の方の理由として、弁護士なしでも解決することができると思ったからという理由が挙げられていました。協議離婚はあくまで話し合いでの解決ですので、話し合いによって条件などに合意することができれば離婚自体は可能です。ただし、実際に解決した内容が妥当な内容・条件であったかは不明確なところがあります。

協議離婚をした方のうち6割の方が、弁護士なしでも解決することができると思って弁護士に依頼（委任）をしていないという統計結果になっていますが、離婚をする時点での、親権者、養育費、面会交流、財産分与それぞれに関して、理解度を質問する内容も含まれていました。
この質問では、どの項目も概ね20パーセント超、30パーセント未満の方が、法的知識を備えていたと回答をしています。また、言葉の意味・内容は分かっていたと回答した方は、どの項目も概ね50パーセント超、60パーセント未満となっておりました。
そのため、法的な理解に関する自己の認識は、合算すれば概ね75パーセント程度の方は、法的知識があるか、言葉の意味・内容は分かっていたということで、概ねどのような点を協議すべきかの知識はあったということになりそうです。

こちらの調査はあくまで協議離婚をした方への調査ですので、離婚調停や離婚訴訟などの法的手続を経て離婚した方は対象に含まれていないと考えられます。
ちなみに令和4年の司法統計では、約8000件の離婚訴訟が提起されており、既済案件（終了した案件）も概ね同程度ですが、判決で離婚が認められたものが約2600件、離婚請求が棄却されたものが約300件、離婚訴訟で和解したものが約3000件、取り下げられたものが約1800件となっています。
令和4年の離婚件数が約18万組ですので、離婚訴訟まで至るのはかなり少ない割合となります。そうしますと、離婚事件において弁護士が関わっている割合はそこまで多くないようです。