杉浦 恵一
令和2年11月27日、大阪高等裁判所で、元夫婦間の裁判に関して、損害賠償が認められたという報道がありました。
報道された事案の概要は、このようなものです。
Aさんの元妻Bさんは、婚姻中の2014年、不妊治療を行っている病院で、夫婦の凍結受精卵を作りました。
夫婦が別居している間の2015年になって、夫の受精卵の移植同意書に署名をして、不妊治療を行っている病院に提出した、ということでした。
その結果、元妻は、元夫に無断で受精卵を移植し、2016年に子を出産し、2017年に離婚をした、といった事実経過のようです。
この大阪高等裁判所の判決では、
個人は、子をいつ、誰との間でもうけるかを決められる人格権としての自己決定権を有している。
望んでいないのに、元妻Bさんに自分の子を出産されたことで、元夫Aさんの自己決定権が侵害されたことを認定した。
ということです。
この裁判では、一審(大阪地方裁判所)では、880万円の損害賠償が認められていたようです。
しかし、控訴審(大阪高等裁判所)では、「元夫の明確な拒否があったとはいえない」ことなどを踏まえて、賠償額を減額し、約560万円の損害賠償が認められたという報道でした。
このようなことは、医療技術の発達や、不妊治療に対する各種助成が増えてきたり、結婚や出産の高齢化傾向が強まると、増えてくる可能性があります。
また、このような問題は、損害賠償を認めることで抑止できるかというと、それも難しいかもしれません。
不妊治療を行う病院と、夫、妻それぞれとの契約の問題もかかわってくるでしょう。
不妊治療を行う病院は、夫、又は妻、もしくは夫婦双方との契約によって、凍結した受精卵を保存していたと考えられます。
夫の同意を得ないで出産される行為が、夫にとって違法だとすると、夫の同意を得ないで受精卵を移植する行為も、また違法ではないかと考えられます。
そういったことがあるので、病院は、受精卵の移植同意書に夫の署名を求める運用(又は契約)にしていたと考えられます。
他方で、妻の方にも、自己決定権という意味では、いつ、どのように出産するか決める自己決定権が認められてもおかしくはありません。
そうすると、妻側では、何らかの事情で卵子をとることができなくなった場合、それ以前に凍結保存されている受精卵が、自己の卵子をもって出産する唯一の方法となる可能性があります。
そのような場合に、夫の同意がないからといって、病院は受精卵の移植を断ったり、受精卵の引渡しを断ることができるのか、今後、そういった問題も出てくる可能性がありますし、契約の際にはこういった点にも気を付けた方がよさそうです。
また、その他の問題として、血縁関係があれば一般には子と考えられていますので、出産することが自己決定権の侵害だとしても、生まれてきた子と元夫との関係をどのようにするかという問題があります。
親子であれば、扶養義務(養育費の支払い義務)や相続に関する権利があります。
生まれてきた子には何の罪も違法行為もない以上、こういった扶養を求める権利や相続に関する権利を否定するのは、さすがに生まれてきた子にとって酷ではないかと考えられます。
この判決は、いつ、誰との間で子をもうけるか決められる自己決定権があるとした点で、新しい判断ではないかと思われますが、ここから更に付随して、色々な問題が発生しそうに思われます。
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