専業主婦の妻が離婚後に就職することなく無職のまま無収入である場合、養育費の算定において、妻の収入は原則としてゼロになります。
但し、妻の生活状況等を客観的に見て働こうと思えば働けるのに本人の意欲等の主観的な理由から無職のままでいるようなケースでは、妻に平均的な収入があるものとみなして養育費を算定することがあります。
養育費とは未成熟の子を扶養するための金銭です。
そして、親の子に対する扶養義務は生活保持義務といい、これは子の親に対する扶養や兄弟間の扶養の義務より水準の高いものです。
具体的には、親は子が親と同程度の生活を送ることができる程度の扶養の義務を負担しています。
養育費は両親が分担すべきものです。
但し、婚姻中の夫婦は生計を同一にしているため、別居していない限り、養育費の分担は問題になりません。
しかし、離婚後は親権者が1人で子を養育することになるため、養育費の分担のためにもう一方の親に対して養育費の請求をすることができます。
養育費の算定においては両親それぞれの生活費に回すことのできる収入を考慮します。
しかし、専業主婦だった妻が離婚後に親権者となり子を養育する場合には、そのまま無職であれば婚姻中と同様に子の養育のための費用は全面的に元夫の収入によることになります。
つまり、専業主婦だった元妻が離婚後も無職で無収入の場合には妻の収入はゼロとして、父親である元夫が全面的に子を養育する費用を負担することになる見込みが高いといえます。
もっとも、専業主婦だった元妻が離婚後も無職のままの場合でも例外的に収入があるものと評価された上で、養育費が算定されることもあります。
それは元妻が働こうと思えば働くことができるのに本人の意欲のなさなどが原因で働いていないような場合です。
このようなケースでは、公平の観点から元妻には潜在的稼働能力があると判断され、元妻に平均賃金の収入があることを前提として養育費は算定されることになります。
この潜在的稼働能力の有無の判断について、過去の裁判例では、「就労が制限される客観的、合理的事情がないのに主観的事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず、そのことが婚姻費用の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される特段の事情」があるかどうかという基準が示されています(東京高等裁判所令和3年4月21日決定)。
まず心身の不調により就労が制限されているようなケースでは潜在的稼働能力は否定される可能性が高いです。
特に元妻の担当医より就労の制限に関する証明書の発行がされている場合には、客観的に労働困難であるものと考えざるを得ないでしょう。
逆に、本人の主観に基づく心身の不調の訴え(客観的裏付けのない訴え)では、潜在的稼働能力が認められることもあります。
次に、子の監護のためにどうしても就労することができないような事情のあるときには潜在的稼働能力は否定される傾向にあります。
注意すべきは単に働きながら子を監護するのは大変であるという主張では不十分で、子の年齢、病歴、監護環境などの諸般の事情を総合して、どうしても監護のために就労することが難しいと判断される事情があれば、潜在的稼働能力は否定される傾向にあります。
最後に、婚姻中専業主婦であったため、キャリアを積むことができず就職困難であるという理由だけでは潜在的稼働能力は否定されません。
そのような場合でもパート・アルバイトなどにより一定の収入を得ることは可能であると判断されるからです。
この場合には、パート・アルバイトの平均的賃金がある前提で計算することになります。
専業主婦だった元妻から収入ゼロを前提に養育費を算定すべきであると主張されたときには、まず当事者間における話し合いでの解決を目指します。
具体的には、就労困難の理由を聞いた上、それが第三者の目から見て本当に就労できない事情になるのか考えます。
もし、働こうと思えば働けるのであれば、元妻の主張が通るとは限らないことから、しっかり元妻に対して反論しましょう。
また病気・ケガの主張があれば、必要に応じて就労困難であることを示す客観的資料(例:医師作成の診断書・就労不能証明書)の提示を求めることも考えられます。
当事者の話し合いでは解決しないときには弁護士に依頼して代わりに元妻と交渉してもらう方法が考えられます。
この場合には弁護士費用が発生するため、相談する弁護士と解決の見通しを踏まえた費用対効果などについてよく話し合う必要があります。
弁護士に依頼する場合でも、依頼しない場合でも、当事者の話し合いでは問題が解決しないときには家庭裁判所に養育費分担調停を申し立てることになります。
この調停の申し立てにより話し合いの場は裁判所に移ります。
調停においては、元妻に潜在的稼働能力が認められることを主張します。
調停でも解決しない場合には、最終的に裁判所が元妻の潜在的稼働能力の有無を考慮した上、養育費の額を決めます(審判といいます。)。
最後に、もし離婚直後の養育費の算定の段階では元妻の潜在的稼働能力が否定され元妻の収入はゼロとして養育費の額が決められ後に元妻が就労を始めた場合には、事情の変更を理由に養育費の減額が認められることがあります。
この場合もまずは当事者同士の話し合いにより問題解決すればよいのですが、話し合いでは解決しないときには、養育費減額調停を申し立てることになります。
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令和6年4月25日に名古屋家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停申立事件 について家事調停を申立てました。
令和6年4月10日に名古屋家庭裁判所に婚姻費用分担調停申立事件 について家事調停を申立てました。
令和6年4月3日に名古屋家庭裁判所岡崎支部に離婚請求事件 について審判が出ました。
令和6年4月2日に名古屋家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停申立事件 について家事調停を申立てました。
令和6年4月2日に岐阜家庭裁判所に離婚等請求事件 について審判が確定しました。
令和6年4月1日に名古屋家庭裁判所一宮支部に離婚等請求事件 について人事訴訟を提起しました。
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