夫の収入がわからない場合には、まずは収入を証明する資料の提出を求めたり、家庭裁判所から夫に対して提出を促してもらうことが考えられます。
それでも夫が収入に関する資料を提出しなかったり、提出したとしても内容がごまかされていると考えられる場合には、夫の収入を推計して養育費を決めることが可能となることもあります。
夫婦は離婚しても、未成熟の子どもがいる場合には、その養育費を分担して負担していかなければなりません(民法766条1項、2項)。
適正な養育費の金額は子どもの年齢・人数によっても異なりますが、必要な金額を両親の収入に応じて分担するのが公平です。
そこで、裁判所が公表している養育費算定表では、子どもの年齢・人数および両親の収入に応じて、目安となる養育費の金額が掲げられています。養育費を請求する際には、この算定表を参照して具体的な金額を決めるのが一般的です。
そのため、適正な養育費を獲得するためには、夫の収入を正確に把握することが重要となります。
裁判所の養育費算定表は、世間にもある程度浸透しています。多くの場合、養育費を請求される側の人(義務者)も、収入に応じて養育費の支払い義務が生じることを知っています。
そのため、離婚問題になると、養育費の支払義務者は収入を隠したり、ごまかしたりすることがあり得ます。
「収入がわからなければ養育費の請求はできないだろう」と考えて収入を隠すケースもあれば、養育費の支払い額を抑えるために収入を低めに伝えてくるケースもあります。
このようにして収入をごまかされたままでは、妻(権利者)は適正な養育費を請求することが難しくなってしまいます。
夫から口頭で収入額を聞いたとしても、ごまかされている可能性が十分にあるのですから、収入を証明する資料の提出を求めることが極めて重要です。
収入の証明資料としては、会社員なら源泉徴収票、自営業者なら確定申告書の控えを用いるのが一般的です。
ただし、副業をしている会社員の場合、源泉徴収票には副業の収入が反映されていません。自営業者の場合も、納税額を抑えるために売り上げを過少申告したり、経費を過大申告したりして、実際の所得が確定申告書に正しく反映されていないことがあり得ます。
より正確な収入を把握するためには、市区町村の役所が発行する「課税証明書」の提出を求めることも考えられます。課税証明書にはその人のすべての収入が反映されているはずだからです。
とはいえ、自営業で、本人が収入や経費を正しく申告していない場合には、課税証明書の内容も信頼性に欠けることに注意が必要です。
課税証明書は、原則として本人でなければ取得できません。配偶者であっても、直接取得するためには本人が作成した委任状が求められます。
そのため、夫の課税証明書を取得するためには、どうしても夫に対して提出を求めなければなりません。
どうしても夫が提出しない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てた上で、調停委員から夫に対して提出するよう説得してもらうことも考えられます。
また、離婚訴訟や審判手続にまで進んだ場合には、「文書送付嘱託」を申し立て、役所から裁判所に提出するよう裁判所から依頼するという手続きもあります。
課税証明書を入手できたとしても内容の信頼性が乏しい場合や、課税証明書が入手できない状態で養育費を取り決めるためには、次善の方法として夫の収入を推計するという方法があります。
夫の収入を推計する方法として、第1次的には、生活状況などを考慮することが考えられます。
別居直前の家族の生活状況に照らして、「最低でもこれくらいの収入はあったはずだ」と推測する方法です。
その他にも、以前に夫の収入額を聞いたことがあれば、その金額を参考にして養育費の金額を話し合うことも考えられます。
これらの方法によれば、生活の実態に応じて妥当な金額の養育費を獲得しやすいというメリットがあります。
その反面で、夫に収入をごまかされても見抜くことは難しく、必ずしも適正な養育費を獲得できるわけではないというデメリットがあることにも注意が必要です。
より公平に養育費を取り決めるためには、信頼できる公的な統計資料に基づいて夫の収入を推計するという方法もあります。
日本の労働者の平均賃金に関する統計資料として「賃金センサス」というものがあります。これは、厚生労働省が毎年「賃金構造基本統計調査」を行い、性別や年齢、学歴別に平均賃金をまとめたものです。
家庭裁判所の審判や離婚訴訟でも、夫が収入の証明資料の提出に協力せず、他の方法で推計することも難しい場合には、最終手段として賃金センサスを用いて夫の収入を推計し、養育費の金額を決めることがあります。
例えば、令和3年の賃金センサスでは、大卒の男性で40~44歳の平均年収は674万7700円とされています。
仮に15歳と12歳の子どもがいて、妻が専業主婦で無収入だとすれば、算定表に基づく養育費の額は12~14万円となります。
養育費を取り決める際には、夫から適正な収入の証明資料の提出を受けて、話し合いで円満に解決することが望ましいことはいうまでもありません。
ただ、夫に「証明資料を提出してください」と言うだけでは、無視されたり、虚偽の資料を提出されたりする恐れがあります。
夫が適正な資料を提出しない場合には、「出す・出さない」でいつまでももめるよりも、ご自身の側で夫の収入を推計した上で養育費の金額を提示し、話し合いを進めるのもよいでしょう。
話し合いが進まない場合には、「賃金センサスに基づいて裁判所に決めてもらう」と申し向けてみましょう。
賃金センサスに基づく平均賃金は、実際の夫の収入よりも高いことが多いものです。夫としても、「賃金センサスで決められるくらいなら」と考え直し、適正な収入の証明資料を提出してくる可能性もあります。
夫の収入がわからなくても、養育費の請求ができないということはありません。
最終的には家庭裁判所の手続きが必要となりますが、賃金センサスに基づき相応の養育費を獲得できる可能性もあります。
弁護士に依頼すれば、このような最終手段も視野に入れて夫と交渉しますので、早期に適正な養育費を獲得することも期待できます。
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令和6年4月2日に名古屋家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停申立事件 について家事調停を申立てました。
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