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婚姻費用を支払う側が住宅ローンや水道光熱費等を支払っている場合は?

婚姻費用を支払う側が、住宅ローンや水道光熱費等を支払っている場合、相手の生活費の一部を支払っていることになりますので、原則として、算定表で決まる婚姻費用の額から控除される場合があります。

ただし、住宅ローンについては全額が控除されるわけではありません。

婚姻費用の算定について詳しくはこちら▶

婚姻費用に住宅ローンや水道光熱費等の支払いは影響する?

夫婦が別居した後も離婚が成立するまでは、収入が低い側(権利者)から高い側(義務者)に対して生活費(婚姻費用)の支払いを請求できます。

持ち家の住宅ローンを支払いながら生活していた夫婦の場合、義務者が自宅から出ていき、権利者と子どもが住み続けるケースも少なくありません。そして、別居開始後も義務者が住宅ローンや水道光熱費等の支払いを続けて いることもあるでしょう。

このような場合、権利者は住宅ローンや水道光熱費等を無視して別途、婚姻費用を請求できるのでしょうか、それとも婚姻費用から住宅ローンや水道光熱費等は控除されてしまうのでしょうか。

結論をいいますと、義務者が支払っている水道光熱費等は婚姻費用から控除されますが、住宅ローンに関しては全額が控除されるわけではありません。したがって、多くの場合は別途、ある程度の婚姻費用を請求できます。

以下では、分かりやすくするために、夫が家を出ていき、妻と子が住み続けている自宅の住宅ローンや水道光熱費等を支払い続けているケースを想定してご説明します。

住宅ローンは一部が控除される

夫が妻と子のために住宅ローンを支払い続けている場合に婚姻費用をどのように算定すべきかについては、法律で明確に決められているわけではありません。そのため、さまざまな考え方があります。

例えば、住宅ローンは持ち家という夫婦共有財産に関する負債なので、財産分与の問題として取り扱うべきであるとする考え方もあります。この考え方によれば、婚姻費用から住宅ローンを控除すべきではないということにな ります。

しかしながら、夫が別途賃貸住宅を借りて生活している場合には、その家賃と持ち家の住宅ローンとを二重に負担しなければならず、生活が苦しくなってしまいます。その一方で、妻は住居費を一切負担していないにもかかわ らず、住居費も含めた婚姻費用をもらえることになり、これでは不公平な結果となります。

夫が住宅ローンを支払い続けるからこそ、妻と子は持ち家に住み続けることが可能となっていることは間違いありません。

そこで、このように義務者が住宅ローンと住居費の二重負担をしている時には、実務上は一般的に、住宅ローンの一部を婚姻費用から控除することとしています。

住宅ローンが全額控除されない理由

住宅ローンの支払いには、その住宅に住むための費用という側面だけでなく、資産形成のための費用という側面もあります。つまり、住宅ローンを支払えば、その分だけ住宅の資産価値が高まり、完済すれば夫が完全な所有権 を獲得するという側面があるのです。

それにもかかわらず、住宅ローンが婚姻費用から全額控除されるとすると、妻は夫の資産形成に見返りなく協力することになり、不公平な結果となります。

婚姻費用を公平に分担するためには、婚姻費用のうち、「住むための費用」に該当する部分のみを婚姻費用から控除する必要があるのです。

具体的な計算方法

住宅ローンの一部を控除して適正な婚姻費用の額を計算する方法として、主に次の2つの考え方があります。

  • ①住宅ローンの支払い額から特別経費を控除して算定表を参照する
  • ②算定表の金額から標準的な住居費を控除する

①は住宅ローンの支払い額から夫の資産となる部分を夫の収入から差し引いた上で、算定表を参照して婚姻費用の金額を求める方法です。

②は夫婦の収入に基づき算定表で金額を割り出した上で、そこから妻が負担すべき住居費を控除する方法です。

このうち、家庭裁判所の実務では、当事者の意見がまとまらない場合には②の方法で解決を図る方法が主流となっています(東京家裁平成27年8月13日決定など)。なぜなら、住宅ローンのうち夫の資産となる部分を正確に算 定するのは難しいのに対して、標準的な住居費は統計資料から簡単に割り出すことが可能だからです。

実際の計算例

簡単な事例を挙げて、実際に婚姻費用を計算してみましょう。

【事例】
  • 夫の年収:600万円
  • 妻の年収:200万円
  • 子ども:10歳の長男と7歳の長女(2人とも妻と同居)
  • 住宅ローンの支払い額:毎月10万円(夫が支払い)

このケースでは、算定表に基づく婚姻費用の金額は8~10万円です。

総務局統計局が公表している「家計調査年報」によれば、年収200万円の人の標準的な住居費は年度によって多少異なりますが、3万円弱とされています。そのため、妻が負担すべき住居費として約3万円を算定表の金額から 差し引きます。

そうすると、妻が夫に対して住宅ローンとは別に請求できる婚姻費用の額はおおよそ5~7万円程度ということになります。

水道光熱費等は婚姻費用から全額控除される

住宅ローンとは異なり、水道光熱費等は婚姻費用から全額控除されるのが基本です。

なぜなら、婚姻費用とは夫婦の生活にかかる費用のことであり、水道光熱費等は生活費そのものだからです。その支払いに夫の生活費や夫の資産となる部分は含まれていません。

水道光熱費の他にも、妻と子の携帯電話代や教育費など、権利者側の生活費に当たる費用は基本的に全額控除されることになります。

仮に夫が妻と子の水道光熱費等として毎月平均して3万円程度を支払っている場合、算定表の金額から3万円を控除します。

上記のケースなら5~7万円からさらに3万円を差し引き、妻が夫に対して別途請求できる婚姻費用の額は2~4万円となります。<\p>

夫婦が合意すれば婚姻費用の金額は自由

以上が基本的な考え方ですが、婚姻費用の金額は基本的に夫婦が話し合って決めるものであり、合意ができれば自由に決めることが可能です。

そのため、住宅ローンや水道光熱費等を控除した金額では生活が厳しいという場合には、具体的に必要な金額を提示し、夫とじっくり話し合って解決することが得策となります。

家庭裁判所の調停・審判に進むと、どうしても上記の考え方に基づいて機械的に婚姻費用の金額が決められやすく、高額の婚姻費用を獲得することは難しくなるからです。

まとめ

夫婦が別居した後も夫が住宅ローンや水道光熱費等を支払い続けている場合、算定表に基づく婚姻費用の額から、妻の標準的な住居費と水道光熱費等が控除されるというのが基本的な考え方です。

ただし、婚姻費用の額は夫婦それぞれの生活実態を考慮しながら、話し合いによって柔軟に決めることが理想的です。

夫婦だけの話し合いでは意見が食い違うという場合には、弁護士を間に入れて、法的観点から話し合いを進めるのがおすすめです。事案によっては、基本的な額よりも高額の婚姻費用を獲得することも期待できます。

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2024年4月

令和6年4月25日に名古屋家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停申立事件 について家事調停を申立てました。

令和6年4月10日に名古屋家庭裁判所に婚姻費用分担調停申立事件 について家事調停を申立てました。

令和6年4月3日に名古屋家庭裁判所岡崎支部に離婚請求事件 について審判が出ました。

令和6年4月2日に名古屋家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停申立事件 について家事調停を申立てました。

令和6年4月2日に岐阜家庭裁判所に離婚等請求事件 について審判が確定しました。

令和6年4月1日に名古屋家庭裁判所一宮支部に離婚等請求事件 について人事訴訟を提起しました。

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